実践・高齢者傾聴|高齢者クレーマーへの対処

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夏祭りと夏休みと選挙と、高齢者クレーマー対処

私の住む街は、月末に市議会議員選挙を控えています。そのため、候補者のポスターや選挙カーをよく見かけるようになりました。ちょうどあちこちで「夏祭り」が行われる時期でもあり、選挙と夏祭りと夏休みで、この街は、今年は特に暑い夏となりそうです。

私もある現職の先生の選挙事務所に出入りしています。細かい作業は苦手ですが、多少の心得はありますので、看板を立てたり、水漏れを止めたり、壊れているところを直したり、電話の配線を引き直したりと、それなりにお役には立てているようです。

選挙事務所に現れた高齢者クレーマー

本日は事務所開き。私も暑い中、汗を拭きながら事務所開きの準備のため、選挙事務所に伺いました。すると事務所の中が騒然としています。見れば70代と思しきご老人が、選挙事務所のスタッフである小柄な主婦を、顔を真っ赤にしながら怒鳴りつけています。

「今すぐ直せ!」「1時間以内に直さないとしょうちせんぞ!」という感じで、お年寄りとは思えぬ勢いでひたすら怒鳴っています。困惑しながら眺めていると、私の姿を見つけた先生の奥様が飛んできて、私に「ご近所でも有名なクレーマーのおじいさんなんです。おじいさんが刺した花壇の杭を、うちのスタッフが車でぶつかって倒してしまったと言ってきかないんです。言いがかりなんですよ。何とかできますか?」とそっと耳打ちしてきました。

高齢者クレーマーの対処法

私は人込みをかき分けると、おじいさんの前に急に立ちました。すると、今まで顔を真っ赤にしながら怒鳴っていたおじいさんが、目を丸くしてこちらを見ています。今の今まで目の前にいたのは小柄な主婦。それなのに、急に体格のいい男性が現れた。予想外の出来事が起きると、関心がそっちに向いてしまい、勢いが削がれるんですね。

私は「どれ、まず現場を見せて下さい」と明るく言い、おじいさんを外に連れ出しました。勢いを削がれたおじいさんは、「お、おう」と言いながら私についてきます。予想外の出来事の後で急に落ち着いた指示が出ると、つい従ってしまうのですね。

高齢者クレーマーには「お名前」で呼び掛ける

おじいさんが指さすところを見ると、園芸用の杭が1本倒れています。一目見ただけで修理するのは造作もないことが分かりましたが、あまり簡単に直してしまってもおじいさんの怒りも収まらないだろうと思った私は、ひと手間かけることにしました。

「お名前何ておっしゃるんですか?今野さんですか?今野さん、これじゃまた倒れてしまうので、私が今から杭を買いに行ってきますから。涼しい所で休んでてくださいね。」私はそう言うと、物陰から心配そうに見守る奥様に笑顔を向けて、車で買い出しに出かけました。

私はホームセンターで杭を買いました。工事現場で使うような、かなり本格的なものです。園芸用の杭とは、大きさも、重さも、値段も全然違います。それと思いついて、ペットボトルのお茶を2本買い、急いで選挙事務所に戻りました。

私が工事現場で使うような杭を取り出すと、ご自宅前で座って待っていたおじいさんは「そこまでせんでも良かったのに・・・」という感じで絶句していました。私は工具箱から大ハンマーを取り出すと、おじいさんの指示で杭を打ち込み始めました。

高齢者クレーマーの負のスパイラル

途中でペットボトルのお茶を渡して、休憩しながらおじいさんと世間話をしたました。するとおじいさんの「寂しい」という感情が何となく伝わってききました。「俺はここにいるんだ」「無視しないでくれよ」そんな感情が、言葉の端々から感じられます。その気持ちを何とか解消したくて「クレーム」をつけてしまう。すると周囲が引いてしまうから、余計に寂しい思いをするのですね。

高齢者クレーマーの大切にしているものを褒める

作業を終え、おじいさんは満足したように立ち上がり、ご自宅へと戻ろうとしました。ご自宅を見ると、立派な鉢植えが沢山並んでいます。「これはすごい鉢植えですね。これだけ育てるのは大変だったでしょう?」と言うと、おじいさんの表情が一瞬緩みました。

「選挙は月末ですから、それまでお騒がせします。終わったらまたご挨拶に来ますから。時々事務所に来ていますから、何かありましたら声をかけて下さいね」表情が緩んだのその一瞬を逃さずそう言うと、「あー分かった」と言ってようやく笑顔を見せてくれました。

高齢者クレーマーに、高齢者傾聴の知識が役に立った

私は昔「高齢者傾聴」という講座を受けたことがあったのです。「とにかく否定せずに、話を聞いてあげる」「お名前で話しかける」「相手の大切にしているものを褒める」など、当時は「ふーん」と思っていたのですが、実はご年配の方への対応としては、とても大切なことを学んでいたのだとようやく気が付きました。

高齢者クレーマーも対応次第でファンに変わる

私は選挙事務所のスタッフに「今野さんを見かけたら、お名前を呼んで挨拶をして下さい」「今野さんは鉢植えを大事にしてらっしゃるので、折に触れ鉢植えを褒めて下さい」とアドバイスしました。スタッフの一人が早速実践してくれたらしく、翌日今野さんに「お茶でもどうですか?」と声をかけたところ、選挙事務所にお茶を飲みにきてくれたのだそうです。

高齢者クレーマーも、対応次第でファンに変わる。高齢者傾聴ってとても実践的で、とても役に立つという事がよく分かりました。今回の一件ですっかり自信がついた私たちは、月末の選挙も一丸となって乗り越えられそうです。