メンタルケアアドバイザー講座|セルフカウンセリング

教員一年目で小学校低学年を担当

私は小学校の教員になってから今年で5年目となります。4年前、教育大学を出たばかりで、教員としても、社会人としても、全然何も分かっていなかった頃、小学校低学年のクラスを担当することになりました。普通は数年の経験がある先生が担当するのですが、その時はなぜか新卒の私が担当することになったのです。

小学校低学年というと、それぞれ個性はありますが、まだまだ「幼稚園児」という感じで、とてもカワイイのです。クラスでまとまって何かをするというよりは、先生の号令で、号令を聞いた子だけが動く、そんな感じです。「いいですか?」と言っても、よそを向いたまま「はーい」と手を上げるくらいですから、つまり「聞いちゃいない」のですね。

保護者と学年主任から責められ、生徒からはあだ名で呼ばれる

授業はとても大切な時間ですが、一歩間違えるととたんに収集が付かなくなってしまいます。例えば「みなさんのように、ちいさくてすばしっこいもの、なんですか?」と質問すると、それぞれ「リス!」「ネズミ!」「バッタ!」のように、全員が手を上げて答えようとします。話を先に進めたいのに、自分の答えが私に届くまで、何度でも言い続けるのです。

男の子が鼻をほじくっていて、他の子がそれを大声で私に言いつけたり、やんちゃな子が「うんち!」なんて言おうものなら、全員が笑い始めてしまいます。1日一度はこんな感じにクラスが騒がしくて、授業が全く進まないという状態になります。これで学年主任の先生に、私が何度指導を受けたか分かりません。

保護者と懇談会をすると、私はたいていご両親よりも年下なので、常に下に見られてしまいます。私も教育大学で学んできたことを織り交ぜながら丁寧にご説明するのですが、担任としてなかなか認めてもらえません。最後には感情的になったお母様から「あなたは子供を産んで育てたことがあるんですか!」と言われてしまい、その日は一日中凹まされることになります。

子どもたちはカワイイけれど、クラス運営が上手くできない。学年主任や保護者からは睨まれる。そんななか、ヤンチャな男の子が私の事を「キンタロー!」と指さしました。当然クラス中が大爆笑。確かに私は芸能人のキンタロー。に似ていると良く言われ、容姿をからかわれることに少なからず傷ついてきましたので、教員になってもそう呼ばれるのは正直苦痛でした。

メンタルケアアドバイザーの巡回相談

小学校には、定期的にメンタルケアアドバイザーという方が巡回しに来られます。管理職を交えずに、教員の悩みを相談できる相手ということで、私も思い切って相談してみました。ヤンチャな男の子、厳しい学年主任、口うるさい保護者、「キンタロー。」というあだ名が不快など、いつのまにか私はメンタルケアアドバイザーの方に愚痴を吐き出していました。

メンタルケアアドバイザーの方は私の話をウンウンと頷きながら一通り聞き終わると、ノートに「自己理解」と書きました。私が怪訝な顔をしていると「自分を知る事です」と教えてくれました。それでもまだ、私はアドバイザーの真意が分かりませんでした。相談したいことは児童、保護者、学年主任などの「他人との関り」です。それなのに「自分を知る事」が解決につながるのでしょうか?

自己理解につながるワーク

メンタルケアアドバイザーの方は、私のノートに「自己理解のために」というタイトルで、具体的に私がやるべきことをサラサラと書き始めました。「いつ、どこで、誰に、何を言われた、その結果どう感じたか」「どうしてそう感じた?」「本当はどうしたかった?どうなりたかった?」「なぜそっちを選んだの?」「次回はどうする?」

「今悩んでる事について、この質問に沿って回答してください」メンタルケアアドバイザーに促され、私は今一番悩んでいる問題について書いて行きました。アドバイザーの説明を受けながらワークを進めていくと、これが自分自身を見つめ直すワークであることに気が付きました。

セルフカウンセリングの思いもかけない効果

私には「大学で幼児心理の専門教育を受けて来た」「教員採用試験にも合格している」「だから私はプロの教員である」という強い思い込みがあることが分かりました。私は知識だけはあるけれど、全然経験値が足りていない。そのことを保護者の方も、学年主任も、そして児童も私に伝えてくれていたのに、私はそれを全然無視していた。だから悩んでいたのです。つまり、今抱えている問題の原因は、他ならぬ自分自身だったのです。

それから私は「教員生活にかかわるすべての人たちが先生です」と思うようになりました。保護者も、学年主任も、そして児童も、みな先生で、私が生徒で、私が学ばせてもらっている。そう考えるようになってから、クラスの運営がとても楽になりました。児童一人一人に目が届くようになり、保護者からも信頼されるようになり、学年主任からも認められるようになりました。

「キンタロー。」というあだ名も気にならなくなった

あれから4年が経ち、私も新任の先生を指導する立場になりました。経験を重ねれば、重ねたなりに悩みはあるものですが、あの時にメンタルケアアドバイザーの方から頂いたワークは、今でも大切に保管していて、時々セルフチェックをしています。

「金スマ」の社交ダンス特集に「キンタロー。」が出ていると知り、気になって観るようになりました。初期の彼女はAKB48のモノマネ芸人で、容姿端麗とはとても言えませんでしたが、今の彼女は社交ダンスを通して驚くほど輝いていて、その姿がとても美しいと思えるようになりました。そうなると不思議なもので、「キンタロー。」というあだ名も全然気にならなくなりました。これもメンタルケアアドバイザーから受けたセルフカウンセリングの効果なのかもしれません。